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中国ビジネス相談室(3)香港企業が中国人スタッフの給与支払い

【相談者】弊社は日本でネット広告を行っています。香港に会社設立して、中国本土から広告費を回収する事ができますか。また、香港の会社が内地でスタッフを直接雇用して、広告関連の作業を行なわせる場合、給料を支払う方法を教えてください。

【回答】中国内のネット広告についてまず述べます。
ネット関連業務は規制業種であるので、100%独資の外資企業が中国内でネット関連業務の営業許可を得る事は、現状ではなかなか難しいようです。ネットではなく印刷による広告も、出版業が規制業種である為に同様に営業許可を得るのは難しいと考えます。(いづれも不可能ではないが、合弁が必要だったり、大きな資本金を要求されたり、中小企業には困難な条件が多い)ゆえに香港に会社設立して、広告情報を提供するサーバーも香港に置けば、少なくとも中国内地の行政が直接的に取り締まりの対象にする事はできません。中国内に置かれた個人ブログなどのウェブサイトにjavascriptなどを埋め込んで、香港の広告サーバーから広告情報を引き出すようにすれば、内地のウェブサイトに広告を出力する事も技術的に可能です。広告サーバーを日本ではなく香港に置くメリットは、広州のゲートウェイから直に中国内地へアクセスできるので、広告対象地域が華南エリアである場合には比較的高速なデータ転送速度が期待できます。ところでウェブ広告の主体が外国にある事が中国政府にバレると、香港にある広告サーバーのIPアドレスをブロックして、広告情報を遮断する事もまた技術的に可能です。より多くの人目に触れなければならない広告という業種で、このようなスキームを展開する事は、ネット業務が規制業種から外されない限り、中長期的にはデメリットの方が大きいのではないかと考えます。

次に、中国内で得た広告収入を香港へ送金する「やり方」について述べます。
そもそも中国内地に法人を設立する前提がないと、広告収入を受取る母体もありません。自分で設立しない場合は、内地の現地法人に広告収入の受け取りを「委託」する事も可能です。但し、その現地法人が広告業務の営業許可がないと、そもそも広告収入の集金が認められず、よって広告収入として海外送金が認められないという事が考えられます。抜け道としては、たとえばネット広告を「計算機技術のコンサルテーション」という名目にして、香港の会社と内地の現地法人の間で、アウトソース契約を結んで、回収したお金を香港へ送金する方法が考えられます。IT関連企業の現地法人に「技術コンサルテーション」を営業許可証に加えてもらい、香港企業が技術支援サービスを中国内地へ販売した事にして、その代金回収と香港への送金を内地の企業が行います。この方法は、内地の企業が中国の税務署へうまく説明できれば、表面的には合法な契約として認めてもらう事ができ、海外送金も可能です。しかしながら大きなリスクが残っています。内地の公安警察によるネット取り締まりによって、このネット広告が中国内企業によるものでない事がバレた時には、芋づる式に現地法人が見つかり、現地法人の責任者は「違法な営業」により逮捕され、更に会社は過去に遡っておおきな罰金を受けるという可能性があります。

最後に、内地スタッフ給与の支払い方について述べます。
香港の会社が中国内地に会社を設立せず、内地に事務所だけを借りて従業員を雇用できるか、という事についてです。これは以前には多くの香港の会社が行っていました。内地での会社設立に大きな資本金を要求されたので、中小企業にとっては、わざわざ内地の会社設立するのは割りに合わなかった為です。現在では資本金はかなり低くなりましたので、このような方法は以前にくらべると大分減ったのではないと考えます。具体的なやり方ですが、香港の銀行で人民元を調達し、現金をハンドキャリーで羅湖の口岸(国境)を越えて内地へ持ち込む人が多いようです。毎月の家賃や内地スタッフの給料などで、毎月の経費は1万元を越える事が予想されます。これを一度に持ち込むと「違法」になり、みつかると現金は没収されて、更に罰金を科される可能性があります。この部分の法的リスクを減らすには、香港の銀行のATMカードを使って、内地のATMで人民元を引き出します。手数料は3000元あたり30香港ドル前後なので、回数が増えると無視できませんが、国境で現金を没収されるリスクを考えれば割り合うと思います。ちなみに現金で給料を支払うと、受取ったスタッフが自分で個人所得税や社会保障(年金積み立て)などを政府へ支払う事が困難になります。ゆえに現金払いを前提としてスタッフを雇用する場合、長期雇用を前提として優秀なスタッフを雇う事は難しいかもしれません。

上記の3つの内容は、どれもブラックな手段で、中長期的には「罰金」の可能性が高いですので、「やらない方が良い」というのが私の結論です。

注意:この記事の相談内容はフィクションであり、相談者も実在しません。

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