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ERPシステム導入が難しい理由(2)ガバナンスの問題

ERPシステムは、受発注や生産から入庫までの処理を、各部門が連携して正しいタイミングで入力する事で、正しい在庫数量や注残管理を実現する事ができると前回の記事で述べました。しかしながらこれは、一見簡単なようで、実はなかなか難しい問題があります。

入荷や出荷などの伝票をERPシステムへ入力するのは、多くの場合に生産管理部や倉庫の実務担当者です。彼ら彼女らは、自分が見えている業務の視野が狭く、他の部所との連携や、どの伝票をどのタイミングで入力するのかを正確に理解する力が不足しています。 故に、視野の広い各部門のトップ管理者がERPシステム運用を理解して、指揮系統の上から下へ、ERPシステムの運用について必要な知識を教育するべきです。つまりERPシステムの導入を円滑に進める為には、責任の明確な組織と、きちんとワークしている指揮系統が備わっている必要があります。このような会社は、本来の意味でのガバナンスが正常に働いています。

ところが、経営者が課長や主任をすっとばして実務担当者へ直に指示を行う会社が多くあり、このような会社がERP導入を行うと問題が生じます。たとえばERPシステムを導入する為の会議で、総経理がERP導入責任者となり、各部門の実務担当者を集めてきて、話しを進めようとする会社などがその一例です。このような会社で生じる代表的な問題として、部門間の連携を取る事ができず、各部門の担当者は自分の部所で理解できる範囲でデータを入力してしまうので、マイナス在庫、無効な受注残や発注残が生成され続け、いつまでたってもデータの精度が改善しません。

この理由は、各部門のトップ(たとえば課長)がERPシステムの運用をきちんと理解している事を求められておらず、実際の運用方法がわからないので部下への指導が出来ず、故にERPシステムの運用は実務担当者へ丸投げされます。実務担当者は、自分の入力するデータがどの部門と隣接しているのか分からず、わかっても部門を超えて連携を取る為の権限もありません。それで最後には、ただ自分がわかる範囲で入力します。その為にマイナス在庫データや無効な注残データを生み出してしまいます。

これは企業内のガバナンスが正しく働いていない事に起因する問題です。このような会社は、本来は指揮系統を根本的に改めて(権限と責任を中間管理職へ委任できる総経理と、自分の責任を果たす事ができる課長と、課長の指示を実行できる実務担当者となるように)組織を改善するべきです。しかしながら、それはまさに絵に書いた餅のような理想論です。現実的な話しに戻すと、そのような会社でERPシステムを導入する場合には、機能を絞り込んで単独部門(たとえば購買部あるいは生産管理部)でのシステム導入を検討するべきです。私の経験でも、実際にそのような実例を何社も目にしております。

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