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中国ビジネス相談室(7)地方政府からデモ情報をもらう方法

【相談者】私は東莞でプラスティック成形工場の総経理をしています。尖閣諸島の国有化が引き起こした反日デモ騒動で、うちの鎮にある別の日系工場で社員のストライキがありました。こちらへ来て1年半になりますが、デモやストライキを間近に見るのは初めてで、正直言って不安です。上海のユニクロは、公安から事前に指示があり、それに従ったおかげで被害がなかったそうです。公安から日系企業へ、そのような指示をする事はあるのでしょうか。どのようにしたらデモやストライキなどの情報を事前に地元政府からもらえるでしょうか。

【回答】まず上海のユニクロの件ですが、一般論としては十分に有り得ます。地方政府から見ると、日系企業はたくさんの地方税を真面目に落としてくれる「お得意様」ですので、内心は大事にしたいと考えています。ユニクロの上海法人が、日頃から地方政府と良好な関係(公式チャネルと非公式チャネル)を作るように努力していれば、地方政府(実際には工商局・消防局・公安局など部門がわかれています)が何か問題を察知した時に、既存のチャネルを通じて情報や指示が来る事は珍しくありません。

さて、公式チャネルと非公式チャネルという説明をしましたが、これはどのように違うのでしょうか。

中国という国は行政組織が日々の業務を行う上で末端組織に比較的おおきな裁量を与えています。たとえば上海市といっても、そこから更に細かい行政区に分かれて、区ごとに役所があります。この役所のトップには区長がいて、工商局・消防局・公安局・海関局などの行政部門ごとに局長がいます。つまり上海市と言っても、実際にはその下の区毎で、行政府の具体的な運営ポリシーや積極性は異なります。その行政区の税収がどれだけ外資系企業(日系企業)に依存しているかで、公式チャネルからのサポート内容も、区毎に異なると言えます。また、公式チャネルから流れてくる情報は、デモやストライキが公安局に許可された等の「事実」が中心、しかも役所の業務時間内での通知になるので、緊急的な情報は直前であったり事後になる場合も有り得るかと思われます。

政府の各部門にはいろいろな情報が入ってきますが、公式チャネルで外へ出せる情報は限られています。公式チャネルでは流せない不確定情報や専門的なアドバイスを入手する方法としては、企業の渉外責任者が地方政府の共産党員、各部門の局長や副局長と個人的に親しくなり、非公式に教えてもらうという方法が考えられます。このように話すと、賄賂を渡して不正を見逃してもらうという方向で想像する人が多いかもしれませんが、そうではありません。たとえ非公式チャネルであっても、未然に問題を防ぐ為の専門的なアドバイスをもらうというアプローチは、企業が中国リスクを管理する手法として導入されるべき戦術と考えられます。行政府から見ても、彼らは基本的に事なかれ主義で動いていますので、問題を未然に防ぐという企業側のアプローチを受け入れやすいのです。但し、個人的な人間関係の構築についても、それなりに便宜(飲食の支払い等)をはかる為の予算が必要です。企業の総経理がオーナーの親族ならポケットマネーを使えば良いのでしょうが、サラリーマン総経理の場合にはそういう訳にも行かず、会計帳簿にきちんと計上できる方法が必要です。考えられる方法としては、飲食を伴う公的な発表会や勉強会などの費用を企業側が負担する方法などがあるかと思われます。

次に、質問者さんの会社で公式チャネルと非公式チャネルを構築する方法についてです。もし工場設立に現地人パートナーが関わっている場合は、まず現地人パートナーと話し会って総経理さんの趣旨を理解してもらい、このチャネルを使って現地政府と企業との公式チャネルの疎通改善をはかる事は効率的です。現地人パートナーがいない場合は、御社の財務部・総務部・通関部などの中国人責任者を通じて、工商局・公安局・消防局・通関局などを公式訪問するアポを取り、総経理さんから直に、差し障りの無い案件から相談を始め、「うちの会社は問題を起こさないように努力しているので、そちらも協力して下さい」という姿勢を示す事からはじめてはどうかと考えます。その上で、現地政府が企画したイベント(発表会や説明会など)へは、総経理さん自身が積極的に参加して、局長や副局長に顔と名前を覚えてもらいます。上記で公式チャネルを構築した後で、非公式チャネルへ発展させるにはどうしたら良いでしょうか。まず、長期的な非公式チャネルの関係を築く対象は、いちばん偉い局長ではなく、副局長が良いと考えます。局長は中央政府から派遣されるエリート(日本で言うキャリア官僚の類)で、部門内でおおきな権限を持っていますが、数年毎に任地が変わります。しかし副局長は地元の人なので更迭でもされない限り、簡単に異動しません。また副局長とパイプが出来れば、局長との関係構築を助けてくれるでしょう。

注意:この記事の相談内容はフィクションであり、相談者も実在しません。

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