起業における製品の機能デザイン方法
本ブログでも紹介しましたが、クラウド・サービスがずいぶん身近になりました。IT業界でこれから起業を考えている方も、クラウドによる月額使用料というビジネスモデルをぜひ検討するべきかと思います。商業クラウド・サービスはいまだニッチであり、零細企業や個人のアイデアが成功する余地があると思うからです。
さて、クラウド・サービスを起業する側から見た場合、下記の要件に分解できます。
1)サービスを構成する画面と機能のデザイン。
2)サービスを実現するソフトウェアの開発。
3)ソフトウェアを稼動させるサーバーの環境と性能とホスティング条件。
この中で最も重要なのが1の機能のデザインである事は間違いありません。どのような機能を盛り込むかを考える時に、人々がどのような使い方をするかを考えて「市場からニーズを集める」方法と、「特定のやり方」に沿って絞り込んだ機能にする方法があります。前者の代表がマイクロソフト社のWindows OS、後者の代表がアップルのMac OSかと思われます。松岡祐紀氏はアゴラで、「万人が欲しいものではなく、おれが欲しいものを作る」という発想が重要だと述べていますが、非常に興味深い意見です。
たとえばApple iPhone 3GSとSONY XPERIA X1(私が持っているスマートフォン)で、上記を比較して見ましょう。iPhoneはジョブズの「俺流」、XPERIA X1はマーケティング部門による「集団知」の代表選手のような製品と思われます。iPhoneは、大胆な発想により操作にかかわる押しボタンが一つだけにして、ソフト側の機能デザインで操作性を補う事により、初心者ユーザーがマニュアルを読まずとも、短時間で操作できるようになっています。
XPERIA X1は(今は廃れてしまったWindows Mobileベースの最後の世代で)Windowsライクなメニューがあり、操作に関係する多数のボタンが全面と側面に配置されており、いろいろな使い方をするユーザーのニーズをできるだけ吸収しようとする意図が伺えます。キーボードのカスタマイズ(機能の割り当て変更)や、操作環境のカスタマイズに関する柔軟性は非常に高く、ある意味マニアックな商品といえます。その一方で、操作が複雑化しており、初心者はマニュアルを読まないと、アドレス帳の登録も難しそうです。
松岡氏の意見に戻りますが、「俺流」の是非の判断は単純ではありません。ジョブズの場合には、市場に受け入れられた事が結果論として分かってるので良い判断だったといえますが、これから市場へ参入する「だれか」の「俺流」が、市場に受け入れられるかどうかは、やってみなければ分かりません。
しかしながら一つ言える事は、どんな業界にも業務を効率良くさばくノウハウを持っている達人はかならず居ます。そういう人の「俺流」をテンプレート化して機能デザインを行えば、最小限の(時間と費用の)投資で効率よくクラウド・サービスの構築を行える可能性は高まるし、マニュアルを書くのも容易です。また、そういう達人のやり方の評価方法ですが、その実務を行う他の優秀な人と比較したり意見を聞くなど、ITの知識とは無関係であるので、評価は比較的容易ではないかと思われます。
中国へ展開する効率的ビジネスモデル(1)
アゴラの小谷まなぶ氏によれば、今年の秋口から中国進出案件が一気に増えるのではないかと感じているそうです。確かに現在、国内市場は停滞しており、欧米市場も不安定です。効率よく利益を得られる可能性がある市場は、高度成長期を迎えた中国しかありません。国内のメーカーやサービス業で、海外展開の余力がある企業は、早急に中国市場への展開を開始するべきです。
ところで中国政府は、海外へ出てゆく外貨について、今でも厳しく規制しています。中国で稼いだ人民元を、どうやって効率よく日本へ持ち帰るか、なるべく長期的に安全(合法)なしくみを最初に構築しておかないと、あとから大変困った事になるでしょう。
少し具体的に説明すると、中国の企業が(購入代金や特許料などを)海外送金する為には、外貨管理局が管理する特別な外貨口座を開設して、送金目的や金額を外貨管理局へ申請し、政府による承認が必要です。なぜ海外へ送金するのか、その合理性を立証するには、そもそも論として、会社設立時に記載する営業許可証の内容、海外仕入先との関係、海外から購入しなければならない必然性などを、「全体的なしくみ」の中で合理的に設計しておくべきです。
下記の図は弊社で深圳に会社設立した経験をもとに、それを日本からの投資という視点に焼きなおして、なるべく税金を(中国と日本の税務署へ)支払わずに、安全(合法)かつ効率よく中国内で人民元であげた利益を日本へ回収するビジネスモデルの一例を挙げてみました。

日本から中国への投資というと、中国本社を北京や上海に置く事が多いかと思いますが、私はあえて、香港+深圳で提案します。その理由は下記の通りです。
1)世界展開の中での中国進出と考えるべきです。その場合、海外統括会社を香港へ置く事には、戦略的に大きな利用価値があります。
2)香港はタックスヘイブン(法人税率が17%前後)であるにも関らず、2010年4月に日本と租税条約を締結しましたので、海外統括会社は合算課税の対象外になります。
3)香港で設立された企業は、CEPA(中国本土・香港経済連携緊密化取決め)により、通常の外資企業より認可される営業許可証の範囲が広い。
4)深圳も北京政府の直轄都市の一つであり、外資が中国展開する際の規制緩和(北京市や上海市ほどではないが)の恩恵を得やすい。
5)深圳市政府は香港経済との一体性を認識しており、市内には多数の香港資本の企業がある事から、香港本社への送金時に、政府機関との交渉が比較的容易です。
このような理由から、中国へ展開する場合には下記の手順で展開する事が効率的ではないかと考えます。
1)香港で海外統括会社を設立。
2)香港で海外統括会社が資本出資した香港本社を設立。
3)香港本社が全額出資して深圳に中国本社を設立。
4)中国本社の利益の一部を増資にまわして、中国内での展開を促進する。
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