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Articles from November 2010



小規模企業の後継者問題

華南の来料加工コンサルティングの先駆者の第一人者である水野真澄氏が自身のブログで、後継者問題について語っています。外部(たぶん取引先などの諸先輩方)の人から酒の席なので指摘されているようです。それに対する回答として、「組織としてブランド力を付ける」事を目的に動いていると述べておられます。 以下に、私なりに要点をまとめてみました。 1)水野という個人名がブランド力になっている現状を、10年かけて会社ブランドへ移してゆく事で、自分がいなくなった後も営業力が衰えないようにする。現在も実務は組織で行っているのだから、営業の問題させ解決すれば良い。 2)僕(講演ができて、本が書けて、動き回れて、酒も飲めて)をもう一人作れ、というのは困難。僕の代わりになる人間を外部から引き抜いても、独立されてしまうので無意味。 この記事を読んで、ある種のミスコミュニケーションが発生していると感じました。諸先輩方は恐らく、実務オペレーションの問題もさる事ながら、経営者の育成について指摘したかったのではないでしょうか。実際にこの記事には、実務をどうするかが書かれておりますが、会社の方向性を決めたり、戦略を考えたりする経営者をどう育てるかの話が(意図的にでしょうか?)含まれていません。 弊社は私を含めて3人の日本人がそれぞれの部門に責任を負いながら、会社全体を共同で経営してきましたが、3人の平均年齢は今年で50歳を超えました。そんな状況なので5年くらい前から、けっこう真剣に後継者を育てる為に試行錯誤してきました。その結果、私の結論は、サラリーマン社員の実務能力をいくら高めても、経営者の代替にはならないという事でした。 日本でも香港でも中国でも、サラリーマン社員というのは、基本的に給料という自分の利益の為に企業へ役務を提供しています。純真で教養の無い工場労働者に、「経営者になったつもりで考えなさい」と教育する事は可能ですが、高学歴で優秀な労働者に同じ事を言っても、経営者の詭弁である事はすぐに見透かされてしまいます。管理者や経営者を任せられるほどに優秀な社員であれば、報酬に釣り合わない責任を与えられても迷惑なだけでしょう。つまり、社内で経営者を育てるのは難しいのです。しかし、世の中には優秀なサラリーマン経営者もいます。彼らはどうやってサラリーマン社員から経営者への壁を越えたのでしょうか。 上場企業の経営者は原則サラリーマンです。彼らは入社した時からトップへ登る事を目標として長期で努力しているだけでなく、昇進の階段のある時点から経営者として教育されます。しかしながら昇進レースの参加者数に比較して、役員や社長の席は極めて少ないのが現実です。その結果、上場企業は潜在的なサラリーマン経営者の大きな供給源になっているものと考えます。 オーナー企業の場合、トップは経営者の親族の中から選ばれるのが普通ですから、社員が自発的にトップを目指す事は困難です。経営者を目指す優秀な社員が(何かの間違いで)入社したとしても、自分が経営者になる資格自体が無い事を知り、いづれ転職して社内から姿を消します。長期的に残る社員は、実務能力に優れていても、経営者の素質の無い者ばかりになるでしょう。 弊社や水野氏のような会社は、上記で言うオーナー企業に分類されると考えます。ゆえに現在の社員の中には、(経営者から明示的な意思表示があった場合を除き)自分が経営者になれると考えながら働いている社員は皆無でしょう。また、経営を任すといっても、サラリーマン総経理なのか、株式をもらってオーナーの仲間入りができるのかでも、社員のモチベーションはかなり異なる事が、この5年間の試行錯誤で分りました。 香港人や中国人は、総経理という名目上のポジションをもらっただけでは喜びません。相応の対価を得る事で喜ぶのです。また、総経理になっても自分の会社にはなりませんから、総経理として成功すれば、次は独立して「自分の会社」を設立する事を考えるようになるでしょう。実力ある総経理を長期でつなぎとめる為には、ある時点で、それなりの配当を得られるだけの株を与え、総経理から真の経営パートナーとして昇格させる事が正解であると考えます。 ところで水野氏は、外部から経営者を引っ張ってくる事について、「僕の下で頑張っている部下たちがいる。それを飛び越して、新しく探してきたリーダーを据える気は僕にはないし、したとしても、上手くまとまる訳が無い。」の述べていますが、これは日本人的視点あるいは経営者的視点でみた水野氏の誤解であると考えます。転職があたりまえの香港・中国の部下達が望むのは、自分達のだれかが経営者になる事ではなく、自分達が安心して仕事ができる環境が「与えられる」事です。もし、外部からボスをつれてくる事が嫌で会社を辞めたとしても、転職先の会社ではけっきょく新しい上司に出会うのですから。