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Articles from July 2011



中国ビジネス相談室(5)中国で工場を設立する方法を教えてください

【相談者】東北地方のある県で、自動車部品の工場を経営しています。震災の影響で安定した生産が難しくなり、お客様から中国への工場移転を勧められました。製造技術には自信が有るし、中国人の若い社員(研修員)が助けてくれると言っているので、生産ラインを中国へ移す事はそれほど不安はありません。それより何より、工場の設立から軌道に乗せるまでの人材が社内におりません。海外素人の経営者が、スムーズに中国進出する方法を教えてください。 【回答】客先から海外移転を勧められたという事は、納品先の工場も中国へ移転する(現地での商売自体は心配無い)という前提で考えて見ます。私が知る限り、日本の中小企業が中国へ工場進出する一般的な方法は大きく分けて下記の2つです。 1)現地企業を斡旋してもらい合弁で工場設立する。 2)自力で工場設立する。 まず合弁について考えます。合弁で始めるメリットは、工場の建屋を借りたり、ワーカーを集めてもらったり、総経理・会計・総務などの主要事務スタッフを合弁先企業から借りたりできる事かと思います。合弁先企業は、地元政府の「お偉いさん」から斡旋される事が多い(密接な関係を持っている)ので、会社登記や、製造機械の輸入手続きなど、地方政府との交渉も彼らなら得意でしょう。逆に合弁のデメリットは、合弁相手の能力・相性・長期的な信頼性など、合弁してみなければわからない部分が多いので、それは大きな賭け(リスク)となります。現実問題として、正しい合弁相手を見分ける事は、海外素人の経営者にはかなり難しいと言えます。 もう一つ、正しい合弁相手とめぐり合った場合でも、合弁事業を長期的に安定させる為に重要な事があります。現地企業が御社と合弁する最大の目的は、彼らの利益を増大させる事ですから、双方の利益がバランスする事が重要です。合弁を通して相手企業の利益増大にどれくらい貢献できるのか、具体的に数値化して考える必要があります。技術や市場を通じた利益増大に貢献できない場合、あなたが思いもよらない方法で利益回収しようとする事が予想されます。そうなれば、あなたは裏切られたと勘違いする事になり、お互いに不幸な結果となるでしょう。 次に、自力での工場設立について考えます。多くの日系企業は、日本から馬力はあるが未経験の社員を連れてきて、力技で工場を立ち上げているようですが、そもそも経営の知識や経験の少ない管理職技術者を、総経理(社長)など要職にすえる事は問題が多いと考えます。 「餅は餅屋へ」という言葉がありますが、会社の立ち上げから工場を軌道へ乗せるまでの初代の総経理(現地社長)は、会社経営の知識と経験がある現地人のプロフェッショナルを、相当額の給与を支払って雇うべきです。そのような人物は、大手の監査法人などへお金を払えば探してもらう事ができます。初代総経理の任期は3年間(場所探しから会社登記完了まで1年間、工場建屋の用意から試作開始できるまで1年間、本番稼動開始して落ち着くまで1年間)ちなみに製造責任者は日本本社から送り込みます。 現地で雇用した総経理に、いきなり大きな金額の決裁権を与えるのはリスクが大きいですので、日本本社から財務責任者を現地へ送り込み、大きな金額の決済の権限を総経理から分離させる事で財務的なリスクヘッジをします。 本番稼動が安定した後の総経理は、ゼロから工場設立する場合ほどの知識や能力は不要です。二期目以降の総経理は、安定した工場オペレーションを維持できる程度のレベルへ、人件費を下げる事を検討します。中国のビジネススクールで経営の勉強した人や、大学院で生産管理の勉強をした人たちの中から面接して一人か二人を選び、二期目以降の総経理の候補とするように準備をします。 財務責任者も、二期目か三期目(1期3年間と計算)には現地雇用者の中で信頼できる人物を選んで、権限を現地責任者へ委譲するようにします。その中で、総経理と財務責任者と、日本人製造責任者(副総経理)の3人が、権限を分け合いながら、相互に監視し合うような体制を構築する事で、中国現地での内部的な信頼性の維持に努めるようにすれば良いのではないかと考えます。 注意:この記事の相談内容はフィクションであり、相談者も実在しません。 <弊社の宣伝> 弊社は工場における生産管理の改善、財務や通関の見える化などのコンサルを併用したシステム導入を得意としたIT企業ですが、東莞地区への工場設立に関する用地の確保、政府との交渉、会社設立、コアスタッフの雇用、試作開始までのトータルな支援も可能です。広東省東莞市へ工場移転を検討されている方があれば、私までお問合せください。

中国ビジネス相談室(4)現物出資した機械の減価償却

【相談者】弊社はパソコン用の特殊な成型部品を製造する工場です。今度、東莞市へ2つ目の工場を独資で設立します。工場の資本金として1億円が必要なのですが、日本の工場で使い古した製造機械を何台か化粧直しして、8000万円で現物出資をする予定です。これらの機械は、まずは香港の現地法人が日本本社から(本社からのファイナンスで)買取り、それを東莞の工場へ現物出資する流れです。ところで最近ある知人から、香港で出る利益を圧縮するために、現物出資した製造機械の減価償却を香港で出来るという話を聞きましたが本当でしょうか。 【回答】香港の現地法人が生産機械を中国の工場へ、現物出資したのであれ無償貸与したのであれ、香港側で減価償却を経費計上する事は認められません。機械を中国工場へ無償貸与した場合、会計ルール上は問題なさそうですが、香港の税務署(IRD)は「条例」により例外なく認めていません。 ところで香港の現地法人は、日本本社から購入する製造機械の代金を、借入金により手当てするとの事ですが、これは2006年以降、非常にマズい方法となっています。現在の中国通関ルールは利益移転を防止する為に、香港の現地法人が、中国工場から客先へ転廠(輸出ではない!)した製品に「利益」を上乗せする事を禁止しています。違反が通関当局に見つかると、場合によっては工場の総経理が逮捕され、巨額の罰金を課され、工場は倒産の危機を迎えます。返済完了までの長期に渡る違法な運用を前提として会社設立する事は、経営者として合理的な判断とはいえません。 ちなみに、日本本社が香港の現地法人に対して増資を行い、そのお金で本社から製造機械を購入して、中国工場へ現物出資すれば、香港の現地法人は借入金が発生しませんので、上記の構造的な問題も生じないものと考えます。ただし、8000万円の現金を社内で調達できない場合には、日本本社が外部から借り入れする事になり不便です。そこで、製造機械を日本本社から香港の現地法人へ現物出資して、更に香港法人が中国工場へ現物出資できれば便利なので、この方法も検討に値すると思われます。