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Articles from May 2012



ERPシステム導入が難しい理由(1)縦割り組織の弊害【修正版】

中国のある資料によると、当初の予算・納期・期待値などにフィットするかたちで、ERPシステムの導入に成功している会社は、全体の10−20%、予算超過・納期遅延・部分的な使用など妥協的に使用している会社は全体の30%、そして残りの50%は導入途中・導入終了後にギブアップして使用できなかった完全な失敗ケースだそうです。この資料で注目すべきは、外資および中資で規模の大きな会社が、ERPシステムの導入に成功し易い傾向があるとの指摘です。 それでは、中小企業でERPシステム導入が成功し難い理由はどこにあるのでしょうか。これから何回かに分けて、私の知識と経験をもとに、その理由と対策について考えてみたいと思います。第一回は、ERPシステムの有無と日常業務との関係についてです。 まずは下記の図を御覧ください。工場の各部門で作成される情報で、受注・発注・在庫など会計に関係する情報の流れを示しました。(内販工場をイメージしたので、通関部門は省きました。) 冗談と笑われるかもしれませんが、工場の受発注や生産管理でキーとなる経営要素のデータは、各部門毎に独立したエクセル表として管理されており、隣接する他部門との間での情報共有が行われていませんし、共有しようという努力も無い会社がほとんどです。 上の図では、各部門の情報は最後に会計部門へ渡されます。会計は月次の財務報告書を翌月5日から15日までに税務署へ提出する義務を負っている為に、締め日を厳密に守る必要があります。ところが営業・購買・生産管理などは、締め日以降に発見した過不足や間違いを、先月レポートに遡って更新してしまうので、各部門と会計とのデータで辻褄が合わなくなります。 もしも全社的なシステムを導入していなければ、あなたの会社も十中八九、このような状況になっているでしょう。この事自体が問題である事は別として、このような状況がERPシステムの導入を難しくしている理由は何故でしょうか。 結論を先に述べると、部門間で辻褄があわなくても良い業務のやり方を現場に残したままだと、部門間で相互に辻褄が合っている事が絶対条件のERPシステムの導入で問題が生じるのは当然と言えます。 下記の図は、ERPシステムを導入した場合のデータの入力と処理の流れを単純化しものです。四角い箱の中が、業務の為のデータ入力や処理を表し、担当する部門を箱の上に表示しました。 大きく3つに分けた工場の主要業務のフローについて、上流部門で入力したデータが、下流方向にある各部門で追加の入力や処理を行いながら流れて行く事が分かります。この場合、ある部門の入力と更新の精度とタイミングは、そこから後ろ側の部門の入力や処理に直接的に影響します。上流の部門で必要なデータが適切なタイミングで入力されなければ、下流の部門ではそれに関連したデータ入力が行えません。 ERPシステム導入前は、各部門が作成する管理レポートのデータ精度やタイミングは、部門内の都合で行えば良かったので、辻褄をあわせるのは容易でした。ところがERP導入の為には、部門毎というよりは、会社全体がERPシステムの都合に合わせて連携する必要があります。データ処理のタイミングが重要ですし、入力精度は最終的に会計レポートのレベルが要求されます。(各部門の入力データが会計処理へ直につながるからです。)その為には、部門別の縦割りオペレーションを改め、会計と生産管理部門(あるいは管理部門)が中心となって、業務の流れ、タイミング、データの精度を仕切って行く必要が生じます。 外資や中資の大企業でERP導入の成功率が高い理由は、もともと月次の財務報告書を、高い信頼性かつ効率的に作成する必要性から、各部門の管理レポートを会計部門へ連携させる事を必然的に行なっていたからではないでしょうか。 では、中小企業ではどうしたら良いでしょうか。答えは簡単です。(しかし実践するのはなかなか難しい。)あなたの会社の管理レポートを部門ごとに独立して作成するのを止めます。そして、上図の業務の流れに添って、データが部門間で相互に関連するようにします。具体的には、部門間で行われる作業はすべて指示書を作成して行い、書類を介してデータが部門間で強制的に連携するようにします。つまり、部門間の連携作業では、あえて「阿吽の呼吸」や「以心伝心」的な作業を排します。また、各部門の実務責任者が定期的に集まって、受注・発注・出入庫・入出荷に関する情報共有を行うようにします。そして最後は、上図を例にすれば、流れの最初から最後までを串刺しできる書類の管理番号を導入する事です。 1)受注から売掛計上まで 品番別・納期別に管理できる受注番号で、受注から売掛計上までの各部門の伝票を串刺しできるようにする。 2)購買から買掛計上まで 品番別・納期別に管理できる発注番号で、発注から買掛計上までの各部門の伝票を串刺しできるようにする。 3)生産指示から入庫まで 品番別・生産日別(要するに生産ロット別)に管理できる生産指示番号(製造ロット番号)で、生産指示から製品入庫までの各部門の伝票を串刺しできるようにする。 これらを現場へ導入できるように努力する事で、ERPシステム導入に必要な社内環境を改善してゆく事ができます。 *文章が読みにくいので、内容を少し整理して書き直しました。(6月6日)

中国ビジネス相談室(6)脱サラして飲食業に挑戦

【相談者】東莞のある工業団地内の工場で総経理をしています。来年は定年退職となり、日本へ帰国するのですが、そのまま中国に滞在する事ができないかと考えています。鎮の繁華街には、日本食レストランが何軒かあり、それなり繁盛しているようなので、私も退職後は日本食レストランでもやってみようかと思っています。飲食業の事業計画や中国でお店を開く事に対する問題点について教えてください。 【回答】 日本人駐在員が自分の名義でお店の営業許可証を取得する事は困難かと思います。そこで地元の中国人の名義を借りるか、パートナーになってもらう必要があります。これは、儲かれば利益の分配で揉め、損すれば損金の補填で揉める事になる可能性があります。これは、日本食レストランのような商売だけでなく、合弁企業全般にいえるリスクです。 パートナーを探し、お店の物件を探し、営業許可証など政府関係の申請を終えた後に、一番大きなな問題に直面します。小さな日本食レストランくらい何とかなるかと考えているかもしれませんが、飲食業というのは誰でも参入できて競争の厳しい業界です。日本食レストランをある程度の長い期間(少なくとも3年前後)維持する為に、下記の条件のうち、最低1つをクリアしている必要があると考えます。 1)料理が上手 あなた自身にセミプロ級の料理の腕があれば、競合するお店より美味しい料理を提供できるので競争力が高くなるだけでなく、料理長の人件費を変動費化する(儲かるるまで給料をとらない)事ができるので固定客が付くまでの経営を容易にします。 2)渉外力が有る 地元の日本人社会で人望があり、友人が多ければ、あなたがフロア・マネジャーをする事で、日本人のお客をたくさん引っ張って来る事ができます。 料理人やかわいい服務員を他店から引っ張って来る事もできます。あとはそこそこの味の料理を、そこその値段で提供している限り、閑古鳥が鳴く事はないでしょう。 3)たくさんお金がある 料理人の腕も渉外力も無くても、投資するお金が十分にあれば、問題の解決はかなり容易になります。腕の良い料理人やかわいい服務員は、他店から高給で引き抜きできます。他店に負けない立派な内装のお店にすれば、地元の日本人は来てくれるでしょう。 但し、大きな投資に見合うような高い値段に設定すると、駐在員は接待の時しか来てくれなくなる可能性があります。それだけで損益分岐点を超えられるかどうか、事前の市場調査は重要です。 飲食業をやるのであれば、客単価と市場調査は特に重要です。あなたの優先順位は「事業で成功する」ではなくて「中国生活を楽しむ」という事かと思います。であれば、あなたの事業計画の中で立地という条件はほぼ固定されている(いま住んでいる鎮)と思われます。あなたの鎮にいる日本人駐在員が、毎日の外食で幾らまでお金を支払えるかを把握する事が重要です。また、何社の日系企業が、どれくらいの頻度でお客や出張者を「接待」しているかも重要です。それを良く調べた上で、幾らにするかを決めます。東莞の鎮は、小規模な飲食業向けの家賃は安いので、損益分岐点に大きな影響があるのは料理人と服務員の人件費、食材の調達コスト、それにお店の席数とお客の回転数と考えられます。この辺のところを押さえながら、メニューの値段と食材の原価、それに人件費を算出して、その範囲内に収まるように努力する事になります。 結論ですが、あなたに料理の腕か、渉外力か、十分なお金があれば、上記のようにして事業計画を練って下さい。もし1つも無い場合には、 潔く日本へ帰るか、日本食レストランをやるお金を銀行へ貯金して、そのお金が無くなるまでの数年間を、地味にスローライフしながら最後の中国生活を楽しむ事を強くお勧めします。 注意:この記事の相談内容はフィクションであり、相談者も実在しません。