ホーム > ブログ

最も単純に製品別・製造原価を集計する方法

精度の高い製造原価の算出は、生産管理を行っている管理者だけでなく、会計担当者にとっても重要です。ひいては、月次の財務報告書を経営の指標とする経営者にとっても極めて重要です。ここでは、製造や生産管理部門と会計部門が協力する事で、非常に単純な方法で、精度の高い製造原価を算出する方法を紹介します。 中国の工場では、下の図にある領料単という伝票を用いて、生産に使用する直接材料を倉庫から製造ラインへ払い出しを行うようになっています。一般的に領料単は、生産計画を作成する部門により、生産指示書(生産指示番号)と連動して作成します。承認された領料単は、生産計画に基づく直接材料の出庫指示を兼ねます。税務局や通関局の工場監査の際には、出荷された製品の生産時の証拠書類として、領料単の開示を求められる事もある重要な伝票です。 この図にある量料単は単純化された一例であり、生産計画に基づく生産数量の製品を製造する為に必要な材料について、部材番号・部材名・出庫数量が記された伝票です。伝票中の用語はあえて日本的な用語を用いる事でこの記事を読む方へわかりやすくしてあります。 もう一つ、領料単とペアになる退料単があります。これは、領料単で製造ラインへ出庫された部材について、対象とする生産計画の終了か、あるいは実地棚卸の為に製造ラインにある部材を倉庫へ戻す時に退料単を用います。伝票のフォーマットは下図に示したように、基本的に領料単とほぼ同じです。 領料単と退料単は、生産に必要な部材の数量計算を手計算(エクセルを含む)で行う小規模な組織の工場では、製品別や製造日別になっていない場合がよく見受けられます。1日に製造する複数の部材をまとめて1つの領料単に記載するケースと、1つの製品の複数製造日の部材をまとめて記載するケースが多いのではないでしょうか。 ここで、生産指示書を製品別日別(ひとつの製品の1日分の製造)に分解して作成し、領料単と退料単も(製品別日別の)生産指示番号に連動して作成・管理するようにする事で、製品別の製造原価が比較的容易に集計可能になります。下記図を参照ください。 ここでのポイントは完成品入庫単です。完成品入庫単を、生産指示番号に紐付くようにします。すると、月初から月末までの良品と不良品の入庫単を製品別に串刺しして、その入庫単に紐付く領料単(プラス)と退料単(マイナス)を部材別に集計すれば、月間に入庫された製品の製造目的で消費された直接材料数量が算出できます。この消費材料数量に、当月末の月間購買単価(月間総平均単価法を推奨)を掛ければ、直接材料消費金額を製品別に算出できます。 この情報を会計部に渡せば、人件費と製造費を所定の数式で製品別に按分して、製品別の月間製造原価が算出できます。この製造原価は、製造原価の70-80%を占めると思われる直接材料金額を、入庫された製品に消費された部材の分だけ計算しているので、途中の計算情報に間違いや誤差が無い限り、単純かつ精度の高い製造原価と言えます。 製造する製品数が多く、製品別・日別で領料単・退料単の作成・管理が困難な場合には、生産管理を支援するコンピュータ・システムを導入を導入する事で、上記の実現が比較的容易になります。

部材メーカーが商社経由で販売するリスク

香港は昔から中継貿易が盛んな都市で、無数の貿易商社が存在します。1980年代に深圳経済特区が生まれてからは、日本から進出するメーカーに対して、部材の供給や完成品の口銭商売で繁栄しました。ところが2006年に、状況が少し変わります。進料加工企業の抱える移転価格リスクで述べたように、中国政府が移転価格税制を強化しました。日本からセットメーカーと一緒に中国進出した下請け工場の多くが、転廠を利用して中国側で納品し、代金請求は香港側で行っています。中国側の納品価格と、香港側の請求価格を「同じ単価」にしなさい、という法律ができました。この法律により、下請け業者が香港側企業へ利益を貯める事が難しくなる事は既に述べましたが、もう一つ、大きな問題が起こりました。 たくさんの下請け部材業者が、大手セットメーカーと商売したいと考えています。しかし既存の取引関係があるので、部材メーカーが新規で割り込むのはなかなか難しい。ところが大手セットメーカーは、部材の調達を、商社からも行っています。そこで新規参入の下請けメーカーは、わざと商社を「挟む」事で、商売が開始する方法があります。商社は既得権という力を利用し、「請求書類」を右から左へ流して、眠り口銭(コミッション)を受け取るだけの美味しい商売です。このようなケースの商流を下記に簡単に示します。 ところが、先に述べた中国の移転価格税制の強化により、香港側でやりとりされる請求書の単価について、C社が発行する請求書の単価と、A社が受け取る請求書の単価が「同じでなければならない」という事になってしまいました。この状況を、全体的に見ると下記のようになります。 上記は、進料加工企業の抱える移転価格リスクの商流と少しだけ異なります。それは香港側の請求ルートが、香港事務所から「販売店」を経由している部分です。上記で、販売金額*4と販売金額*5は原則として同じでなければなりません。つまり販売店である商社は、*5に口銭を乗せられないという事になります。この法律が出来て4年になりますが、未だに上記の方法で口銭商売を続けている商社は、特定のセットメーカーのベンダーで少なくないようです。 現在のところ、中国の税関や税務署が香港側へ査察に来たという話しは聞きませんが、いづれ何らかの方法で「実力行使」による摘発を行う時が来る可能性は否定できません。この時、一番大きなリスク(罰金)が来ると思われるのは下請けメーカー自身です。その時には、商社もセットメーカーも「知らん振り」で逃げる事が予想されます。(他所の会社の罰を共有したがるサラリーマンがどこにいるのでしょうか)他所もやっているからと放置していると、大きな経営リスクを生じます。ゆえに香港側で商社経由で「代金請求」している下請け部材メーカーは、一刻も早く、直接取引形態へ商流を改める必要があります。 この場合の対策として、次の2つが考えられます。実力のある下請け業者は、3を選択するべきです。日本側で商社と「切っても切れない」関係がある場合には、2で対応できるように、本社の役員を動かしましょう。移転価格税制にきちんと対応すると、香港事務所に落ちる利益が激減するので、口銭の原資を確保するのが難しくなるので、1は良い選択とはいえません。 1)外口銭(口銭を別途請求)にする。 2)日本本社側で口銭支払いを行う。 3)商社に外れてもらう。 実は香港には、眠り口銭を受け取る為に設立された、実体の薄い商社もあると聞いています。そういう商社は、部材メーカーが移転価格税制に真剣に取り組み始めた場合、香港から消滅する可能性もあるでしょう。